子どもは何人にする?お金の面から試算してみた(3)三人以上の場合、本当に怖いのは「重なる時期」
シリーズ最終回(1本目・一人っ子、2本目・二人きょうだいは別記事)は、子どもが3人以上の場合を試算する。1本目・2本目と同じく「何人にするか」を検討する材料としての試算だが、3人以上になると、それまでとは質の違う論点が出てくる。総額の大きさよりも、進学時期が重なるタイミングの負担急増が本当の課題になる。

あたま3人分の試算を並べたとき、正直「桁が違う」と身構えた。ただ最後まで計算してみると、怖いのは総額そのものより別のところにあるとわかった。
総額の目安:私立か公立かで4倍以上の差
3人分の教育費総額は、進路によって次のように試算されている。


- 幼稚園〜高校まで全て公立:一人当たり約550万円(3人で約1,650万円)
- 幼稚園〜大学まで全て公立:一人当たり約1,000万円(3人で約3,000万円)
- 幼稚園〜大学まで全て私立:一人当たり約2,500万円(3人で約7,500万円)
私立中心にするかどうかで、3人分の総額は1,650万円から7,500万円まで、実に4倍以上の開きが出る。3人以上を考えるなら、「全員をどこまで私立に通わせる想定にするか」を早い段階でイメージしておく価値がある。
見落とせない制度変更:多子世帯は2025年度から大学無償化の対象に
3人以上を検討するうえで、この試算をそのまま信じる前に知っておくべき制度がある。2025年度(令和7年度)から、子ども3人以上を同時に扶養する世帯を対象に、大学等の授業料・入学金が無償化される制度が始まっている。 しかも所得制限はない(2024年度までは世帯年収600万円という制限があったが撤廃された)。
支援額の上限は学校種別によって異なり、私立大学は授業料70万円・入学金26万円、国公立大学は授業料53.58万円・入学金28.20万円が目安になる。上記の総額試算(3人で公立約3,000万円、私立約7,500万円)は、この制度を考慮しない場合の数字だ。対象条件を満たしている期間中は、実際の負担はこれよりかなり圧縮される可能性がある。
ただし、2つの重要な注意点がある。
- 「同時に3人扶養」でなくなると対象外
第1子が就職して扶養から外れ、扶養する子どもが2人になった時点で、下の子が在学中でも制度の対象外になりうる。年齢差が大きく開いている場合、「上の子が独立した後、下の子は対象外」というケースが起こりやすい。
- 資産要件がある
所得制限はないが、生計維持者2人の場合は資産2,000万円未満、1人の場合は1,250万円未満という条件がある(対象は預貯金・有価証券で、不動産は含まない)。この制度をあてにしすぎて資産形成を怠ると、逆に対象から外れるという逆説も起こりうる。
児童手当は3人目から手厚くなる
児童手当は第3子以降、全年齢を通じて月3万円が支給される。この増額分により、3人分の児童手当累計額は約1,116万円になる(第1子・第2子で約234万円×2、第3子で約648万円)。公立中心の総額約3,000万円のうち、3割超を児童手当だけでまかなえる計算になる。人数が増えるほど、児童手当が資金計画に占める比率は上がっていく。
本当に怖いのは「金額」より「重なるタイミング」
3人以上の教育費で実際に家計を圧迫するのは、総額そのものよりも複数の子どもの進学が同時に重なる時期だ。ある3人きょうだい家庭(17歳・15歳・13歳)の実例では、進学時期が集中する期間に3年間で約135万円、2年間で約67万円という重なり特有の追加負担が発生したと報告されている。特に高校と大学の進学が同時期に重なると、負担は一気に跳ね上がる。
年齢差が近いほど「重なる時期」は短期集中型になり、年齢差が離れるほど「重なる時期」は分散するが総期間は長くなる——という構図は2人きょうだいのケースと同じ考え方が当てはまるが、3人以上になると重なりのパターンが複雑になり、事前のシミュレーションの重要性がより増す。
対処法として挙げられる手段
- 教育ローンの活用:一時的な資金不足を柔軟な返済計画でカバーする
- つみたてNISA・iDeCoによる長期的な備え:早い段階からコツコツ積み立てておくことで、重なる時期のショックを和らげる
- 高等教育の修学支援制度・多子世帯向け大学無償化制度の活用:世帯収入によっては大学の授業料減免・給付型奨学金の対象になる。多子世帯(子3人以上を同時扶養)であれば、上記の無償化制度も検討対象に入れる
3人以上を考えるなら、生活防衛資金も厚めに
3人以上の家庭は、教育費の重なりに加えて、子どもの病気など予期せぬ出費が発生する確率自体も上がる。子育て世帯の生活防衛資金の目安(6〜12か月分)は、人数が多い家庭ほど「12か月分」に近い側で確保しておく方が安心感につながる。
まとめ:3部シリーズを通じて
1人・2人・3人以上の3パターンを通じて見えてくるのは、「人数が増えるほど大変になる」という単純な話ではなく、論点そのものが人数によって変質していくということだ。
- 1人:進路選択の自由度が高い分、私立を選ぶかどうかが総額を左右する
- 2人:年齢差によって「負担の重さ」と「負担期間の長さ」のトレードオフが生まれる
- 3人以上:金額の大きさより、進学時期が重なるタイミングの負担急増が最大の論点になる。ただし2025年度からの多子世帯向け大学無償化制度により、条件を満たす期間の負担は試算より圧縮される可能性がある
どのパターンにも共通するのは、児童手当という共通の原資を早めに運用に回すこと、そして進学のタイミングを年表化して「いつ、いくら必要か」を可視化しておくことの重要性だ。



1人・2人・3人以上と試算してみて感じたのは、人数が増えるほど「気合いで乗り切る」余地がなくなっていくということ。3人以上の家庭ほど、年表化してシミュレーションする作業そのものが必須になる。
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